いままで・・・


一年目。
  傷つけてしまった年の冬、その日はわずかに雪が降った。
買い物に出た自分は寒くて早く帰りたいはずなのに、足は自然にそちらに向いていて。
買い物袋をさげたまま、傷つけて、もう二度と台頭に話せなくなってしまった親友の家明かりを
前に立ち止まる。
会いたかった。会って、もう一度あのことを謝りたかった。
けれど、また足が竦んでしまう。
それ以上は進めなくなって、門の前で呟いた。
”ごめん・・・・”
そして
”おめでとう”
吐きだす息は白く上がって、駆け出す。
解けた雪に、足跡が残る。

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二年目。
  遠くで彼が、他の誰かと笑って話しているのが見えた。
すれ違い様盗み聞けば、生まれてきた日を祝われていた。
何もいえなかった。
そういう仲になっていた。
(ほんとうは告げたかった)

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三年目。
  洗い物を夜中にしていたとき、突然思い出した。
忘れていたのにこの日に限って思い出し。
浮かんだ瞬間たちまち頭の全てを占める。
何かしたいと思ったけれど、何も出来ないことも思い出して
馬鹿らしくなって嗤った。
湯気の薄くあがるぬるま湯に食器を沈めて
”おめでとう”
そっと言った。

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四年目。
  今度こそ言えたはずだった。
気がついたのは、メディカルルームのベッドでそれからすぐに眠ってしまった。
随分長い間そのままだった。
起きてからもずっと待った。


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・・・やっと言える。




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