アルヴィス内を歩き回るようになってから結構な時を過ごしたけれど、それでも立ち入ったことの無い場所の方が多いわけで。
・・・多分、今いる場所は知らない場所であると思う。
(・・・戻ろう)
がっくり両肩を落として体の向きを変える。
まっすぐ歩いてきただけなのだから、しばらく歩けば総士お別れたエレベーターの位置まで戻れる。
戻って、甲洋の治療室まで戻れば、あとはかって知ったる道だ。・・・と思った。
けれど思い返せば迷っていないと確信している間は何回も曲がったし、エスカレーターにも乗った覚えがある。
そういえば、前に剣司達が言っていた。
“迷路で迷子になったら片方の壁に手をついて歩くんだ。そしたら時間がかかっても必ずゴールに着く”
隣にいた衛も確か大きく頷いていた。
“ほんとか?総士?”
数列離れた最前列の席に腰掛ける総士にも確認を取った。
“・・・あくまでスタート直後から壁に付いていたらの話だ”
教室を横断する声。
総士の声は特に張り上げられす聞き取りにくかったが、あきれ果てていた。
(迷路か・・・アルヴィスも迷路だよな)
そっと壁に手をついてみる。
自力で脱出したい一心で、どんなにかアホなことをしているのか見えていない。
(よしっっ)
気合いを入れて新しい道へと一歩踏み出した。“スタート直後から”という総士の言葉を綺麗に無視して。