もうないと思った
そわそわしながら総士の反応を待つ。
なんて言われるだろうか。
どんな顔をされるだろうか。
どんな風に、思ってもらえるだろか。
答えは、すぐに来た。
まず、「開けていいか?」と訊ねられた。
表情の変化はとくになかった。
心の中なんて覗けなかった。
プレゼントを飾っているリボンは、赤と緑しかお店に用意されていなくてそれなのに何故か、赤を選んだ。
緑は男の子用だったと思うのだけれど、赤のほうが見栄えが良い気がした。
赤の、リボンで飾ってもらって
ぱっと見プレゼントだとわからないように無粋な紙袋で隠してもらって
総士の前まで抱きかかえてきた。
今まで運んできた、夜食と大差ない外見。
夜食と同じように総士に手渡して、
軽さに総士が驚いて顔を上げたのに目を合わせて、
にっこりわらってからおめでとうを言った。
「ありがとう」は無かった。
「開けてもいいか?」がきた。
だから
「いいよ」
と言った。
くしゃくしゃの紙袋が床に落ちて、中から小箱。
赤いリボンがかかってる。
リボンがはずされて、箱が開けられて。
開けられたはずがすぐに閉じられた。
どうして?
「ありがとう。もう、無いかと思ったんだ・・・だから・・・」
そんな風な言葉。
言えなくなってしまう前に急いで伝えようとした、細くて小さい声。
言葉ですらそんなだから、顔は真っ赤で。
真っ赤になるくらいにまで、総士は喜んでいてくれて。
喜んでいると感じるくらい、嬉しそうで・・・・・・。
「もう無いかと・・・」
繰り返した。
総士にこんなふうに何かを贈ってくれた人たちは、みんないなくなってしまったから。
いなくなってしまったから、総士は諦めて。
今日のこの日を、別段変わらない、普通の日と同じように過ごそうと決めた。
おめでとうも、なにもない日。
そんなの、寂しいじゃないか。
「総士の気に入ってくれそうなもの、めちゃくちゃ探したんだ。探したの、今日だけじゃないんだ」
総士が、手渡したばかりのプレゼントを、しっかり抱いてくれていた。
いくつかの店を廻って、いくつかに目星をつけて、三回ずつ見て廻って、ようやく一つに決めたプレゼント。
これなら総士が気に入ってくれるだろうなって思って決めた。
総士が喜んでくれたらいいなって。
「すごく嬉しい」
誕生日とか、クリスマスとか。
普通にしてたくても、普通じゃなくなる日。そういう日はある。
期待してるって人にばれるのは恥ずかしくて、でも、諦めるのは悲しくて
でもたいてい、何もなくて・・・何かあったら、泣くほど嬉しい。
今の、総士みたいに。
「誕生日、おめでとう」
総士に会って、一騎が帰っていなくなったその後で、プレゼントだけはちゃんと残って
そのプレゼントを見て、総士が安心してくれたらなって思う。
ちゃんと総士を大事に思ってる人がいるって、わかってくれたら、嬉しいと思う。
物ってきっと、そういうためにある。
ありがとうって。
大好きって。
そういうのがいっぱい、詰まって。
END