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 他のパイロットが仮にザインに乗れたとしても

きっと乗せなかった。



笑顔



 他のパイロットのザイン搭乗訓練が終わって、ジークフリードシステムからふらふら降りてきた総士を

隣に座らせてこちらに寄りかからせる。

「大丈夫か?」

ぐったりとなった総士の頭に、予め用意した濡れタオルを乗せた。

二人目の訓練ともなれば、総士がどうなるかぐらいわかる。

「総士・・・俺がいる。・・・いるんだから」

別にやらなくていいのに。

他のパイロットのザイン搭乗訓練なんて。

「そう思うだろ?総士も」

総士の体重のほとんどを預けてもらったお礼に、総士の頭を撫でて、指先で総士の髪を梳く。

「俺なら、ザインに耐えられる」

他の奴らじゃ、感覚の全てを総士に押し付けるだけだ。

「大体、おかしいじゃないか。他のファフナーは、他のパイロットじゃ不都合だからそれぞれに合った奴が

乗らされてるのに、ザインだけ全員試すなんて」

 そんなこと、総士に言っても仕方がない。

全部命令だから総士はやってる。

 でも、やめてほしい。

だってあれは・・・・・・。

「ザインは、お前のものなんだ・・・・・・」

「俺が、お前のために、ああいうカタチにしたんだ」

「お前が訓練で倒れるの、当たり前なんだ」

「他の奴に触らせないでくれ・・・あれは、俺なんだ」

「嫌なんだ・・・他の奴があれに乗ると・・・・・・苦しい」

 二人きりの場所をわざわざ作って、お願いする。

友達で、親友で、かけがえのない、命と心の全てを預けた人間に。

 一つしかない。

決してなくしてはならない、大切なもの。

それが、ザインであって、つまり一騎。

「総士も・・・わかるだろう?・・・・」

総士を抱えたまま、上を見上げる。

キールブロックの全体を覆うウルドの泉が自然発光して、照らし出す。

コレもザインも同じだ。

ジークフリードシステム。

「あれは、お前しか使えない」

「あれは、唯一のもので、そういう価値をもってる・・・・・総士も同じだ」

声が少し詰まった。

「他の奴があれを使えるようになったら、嫌だろ?」

抱きしめた総士の体が、少し震えた。

総士の気持ちを落ち着けたくて、少し強めに抱いた。

その手を抜けて、総士が手を伸ばしてくる。

額の上に乗ったタオルは、目まで被さっている。

でも、総士の手は少しも逸れることなく一騎の頬に触れた。

 そして動く唇。

「明日、最後の二人を試す」

動けないまま、総士の唇を見つめた。

酷いことを、平気で言う。

このあとどうするべきか、すこし悩んだ。

唇がまた動いた。





「どうせ誰も乗れない」





酷いことを続けて言った唇は

嘲笑った。