ポッキー


  間食などしないはずの総士が、ソレを咥えていて驚いた。

ただ、よくよく考えてみればパイロット全員に差し入れで配られたポッキーが総士だけに渡っていないわけはなく。

一騎自身、ついさっき仲間たちと一緒に自分の分を平らげてきたところだ。

・・・・半分残して。

その後すぐに総士の部屋に直行したと言うのに、当の本人の手の中には、一パックそのまま握られていた。

多分開けたばかり。

「で、なんだ?」

「え、あ、いや・・・」

まさか今更、いや、よくよく考えてみれば、菓子なんて必要としていないとわかりきっていたはずの総士に

ポッキーを持っていくなんて不自然すぎはしないか。

しかも、食いかけ。

”半分あげるね〜”なんて、男がやるもんではない。

なんてことに今更気がついた・・・ら、猛烈に恥ずかしくなった。

というか、それをまさにやりに来た自分は相当ダメなんじゃないかと。

恥と自己嫌悪と恥が混ざって二の句が告げない。

せめてもの救いは恐らく今が総士にとっての休憩時間であること。任務と全く関係ない今なら、総士の頭は

完全リラックス状態でボケボケのはず・・・だ。だったら切り抜けられるかもしれない!

「そ、総士のは何味なんだ?」

「ミルクだが?」

「俺のチョコ味なんだ、半分交換しないか?」

「・・・種類があったのか?」

食いつきの良い総士に心の中でガッツポーズ!ただ半分分けてあげに来たのと、別の味が欲しいからわざわざ

こんなところにきたのじゃ違・・・・・・

(同じじゃんっ!!)

走る衝撃。嫌悪感は自己否定率を上げる勢いだ。

「そ、そう。何種類かあってさ、それで・・・」

(なんだこの言い訳っ)

「・・・ほら」

壁に頭を打ちつけようとした瞬間に差し出されたポッキー。

若干震えながら受け取ると、一騎のよこせと言わんばかりに伸ばされた手が待っていた。

(総士が可愛いぃぃぃっ)

今度こそ本当に壁に頭を打ちつける。

 そんな一騎はいつものことだと判断したのか一騎から奪った一本を咥えたまま、総士は書類に目を落とす。

壁から頭を離した一騎が見たときには、総士のポッキーは新しい長さのまま。

これは、誘っているとしか思えないからやるしかない。

総士の咥えたチョコポッキーにかぶりつく。

あとで蹴り倒されるのが怖かったから、真ん中あたりで強制終了。棒状菓子をへし折った。

パキッと軽い音がして、若干粉が顔にかかって総士驚いた顔が見えた。







ちょっと残念。







END