逃げられる


 自分の素早さが30ならば、総士の素早さは70を越えていると思う。

捕まえようとして、捕まえられた試しがない。

たまに捕まえられたと思っても、それは向こうに用があったとか(それは捕まえられたということ)、

総士の仕事と仕事の合間を縫った、すれ違いの逢瀬であったりするわけで。(すれ違い様に微笑んでくれるような乙女属性は総士にはない)

総士が一体ドコに消えるのか、こちらはさっぱりわからない。

自分の体力が92として総士の体力は61。

接近戦ともなれば捕まえられないはずはないのだけれど。

なのにこちらは触れもしないで総士にヒラヒラヒラヒラ逃げられるのは。

(ひょっとして俺・・・ナメられてる?)

もしそうだとしたら、かなりのショックだ。

 昼、食堂で待ち伏せた日は、総士の昼抜きDAYだった。

浜まで探しに行っても見つからなくてショゲたあの日は総士は慶樹島から海を眺めていたそうだ。

バーンツヴェックで見事にすれ違った日は、夕食をつくる気が失せた。

「総士ぃぃぃぃ・・・・」

 やっぱり先日強引に迫ったのがまずかったのか。

モンモンとしながらおぼつかない足取りで角を曲がった。

と、そのとき!!



目の前に総士があらわれた!!



ハッとお互い目が合った瞬間、総士の乗ったエレベーターのドアが閉まった。





END



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