12月27日
疲れきってへたばった総士がベッドにうつ伏せに潰れている・・・・・・のを、しばらく観察した後、
傍に座って背中を擦ってやる。
「気持ち良いか総士〜?」
投げやりに訊ねると、くぐもった返事がベッドから返ってくる。
今日この日は総士の誕生日・・・・・・ということで、絶対に用意をするから時間を空けろと三週間前に
総士に伝えてから、時間があっという間に経ってしまった。
総士は確かにこの日の午後を丸々開けておいてくれたので、昨日の夜はかなり満足した気分で一騎は蒲団に
潜ったのだが、結局午後を空ける為の総士の努力は大人とフェストゥムに一蹴されてしまい、前々から地味な
努力を続けていた分、結局倍の仕事をこなす事になってしまい、それでも時間を作るために全力で頑張った総士
は、27日残り2時間をキープした時点で思い切り潰れてしまった・・・・・・というなんともお粗末な事態で。
総士の体調に誕生日を楽しもうという余裕は吹き飛んでしまった。
今現在は「眠い・疲れた・背中が痛い」の三拍子。
二人して部屋に戻ってきた後、15分だけ横にさせてくれるよう総士に懇願されてから、もう8分経った。
嫌な予感がして、今は総士を必死に擦ってやっているが、擦っている途中に寝られてしまったらどうしようと
いう不安で胸が一杯だった。
寝てしまった総士を起すのも可哀想だが、昨日まで今日のために今日を楽しみに頑張ってきた一騎も可哀想だ。
「なぁ総士・・・起きてろよ・・・」
指にこめる力を増やす。
総士が唸って身を起こした。
「・・・・・・大丈夫だ」
早速寝癖がついた髪に、大丈夫なんかじゃないだろう・・・・・・と言いたくなる。
起き上がって、両手で顔を覆いそのまま俯いてしまった総士に何も言えなくなる。
そのまま三度ほど総士が顔を拭って、ショボショボした目を向けてきたとき、いっそ総士の誕生日は28日だった
ということにしようかと、本気で思った。
「なぁ総士・・・・・・やっぱり28日に・・・・・・」
「嫌だ」
提案した直後に断られる。
「だって・・・・・・」
なおも引き下がらずにいたら怒られた。
「僕が生まれたのは27日だ」
「・・・・・・ああ」
誕生日に拘る気持ちは物凄くわかってしまって思わず強く頷いてしまう。
「・・・・・・おめでとう総士」
優しく笑ってから、伝えた。
「ありがとう」
寝癖で弾け飛んだ髪を揺らしながら総士が笑う。
笑い返し、ソファーの脇に隠していたケーキを差し出す。
「ありがとう」
ますます嬉しそうに総士が笑う。
「俺が作ったんだ」
そう言いながらロウソクに明りをつけて、電気を消した。
「この特別な雰囲気が大好きなんだ」
総士が呟く。
知っていた。だから懸命に用意した。
ロウソクも、苺も、丸いケーキも、馬鹿みたいに色とりどりのリボンで飾ったプレゼントも。
誰にも総士は言わないけれど、どれも総士が大好きなものだ。
総士がロウソクの火を、こんなに嬉しいことは無いというかのような顔で吹き消す。
真っ暗になる。
ケーキの上で総士にキスした。
END