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明日になったら


 居間の畳に倒れ込んだ。

はずみに頬が擦れて熱く感じる。

起き上がる気力も無い。

隣に、同じ様に倒れ込んでいる総士。

屍二体。

 午前に一回。午後に一回。

間に三時間。

今日の、出撃回数。

「もう駄目だ……これでもう一回来たら死ぬ……」

 総士に聞かせるための独り言。

「その時はもう一回出撃だ」

 脱力しきった声が隣で上がる。

総士に至っては二回分の戦闘データをまとめるとかで、これから作業……という気配のところを無理矢理攫った。

無理矢理……というのも間違い。

無理矢理を装って、一騎の家まで二人して必死に逃げてきたといったほうが正しい。

他のスタッフとの接触を、避けて避けて避けまくって逃げた。

 30分ほどそのままの姿勢でバテテいた。

そのうち、まあ、とりあえずは動けそうな気がしてくる……。

「せっかくだし、何か作るよ総士……」

 重い体を叱咤して立ち上がる。

軽い眩暈がしたけれど、すぐに戻った。

「いい」

 その瞬間断られる。

「なんで?別に俺は……」

 ズボンの裾まで掴まれて引き止められる。

足元の屍に抗議した。

足元の屍と目が合った。

まっすぐ。

「自分の顔を鏡で見てから物を言え一騎。」

 自分の顔のことなどよくわからず、とりあえず誤魔化すために頬を掻く。

ついでに、自分が平気であることを知らせられればと。

 ズボンの裾は、握られたままだ。

 仕方なく、総士の傍に腰を下ろす。

 すぐにそれだけでは物足りなくなって、横たわる。

「流石に二回は……」

 きつかった。

 二戦目にミスが増えたのも確かだ。

 寝返りを打つ。

 総士の方を向く。

 このあと三回目が来たらどうするか聞きたかった。

 出撃はもちろんするけれど、ブルグに行くまでに気力を使い果たしそうだ。

「回復に専念しろ……」

 総士の方こそ上手く喋れていない。

 からかおうとした。

「誕生日くらい、ちゃんと休め」

 すっかり忘れていた言葉に目をむく。

 慌ててカレンダーを見る。

 そうだ、今日は確かに。

「あ……ありがとう」

 もしかしたら、早朝一発目の戦闘が無ければ今日の自分は一日暇だったのかもしれない。

 二発目の戦闘が無ければ、もっとちゃんと総士に祝われたのかも……。

「こんなことになってすまないが……明日は休みにするから……」

ぐったりと畳みに沈む総士。

一騎が横になってからは、安心したのか一騎の方など見向きもしないで死んでいる。

座布団を足で手繰り寄せて、総士の上に掛けた。

自分は総士の傍で丸くなる。

残り数時間の今日を、満喫しようと思った。













END