死と閃光


 激しい光に目がくらんだ。

巨大な金の鯨のようなフェストゥムが、蛸の足のような大口を広げ島に喰いつこうとした。

アレを後から引き剥がすことはできないだろう。

そう思って、背中から突き刺そうとした攻撃をやめ、ルガーランスの切っ先を前に広がった口の中へと突撃していった。

敵の硬度に途中で突撃の勢いが殺されてしまったら、そのまま鯨の真ん中に取り残されて死ぬんだろうなと。

敵の柔らかさだけを想い、突き進んでいった。

中が、眩しい。

敵の中なのに光しか見えない。

死の直前のように錯覚した。

光の中に取り残されないことを祈る。

停滞は死。光を超えられれば、生きられる。

光一色のまま。

どうなったのかわからない。

果たしてマークザインは、止まってしまったのか。

 一瞬浮遊したような感覚。

突如眼前に海底が広がった。

何もできないまま首が、胸が、肩が、海底に削られる。

衝撃で関節が外れる。

胸を海底に打った。

 折れた腕が強制的に切断され、無事な手でランスを握り振り返った。

総士に伏せるよう命令される。

フェストゥム消滅時の歪曲回転体の質量は敵の大きさに比例するという会議室での報告を体感。

後、前後不覚に陥りながら立つ。

フラフラしながら外れた腕を拾い上げた。

《無茶をする》

他に取れたものが無いか見回しているうちに総士が様子を見に来た。

コックピットの中は頑丈すぎて傷一つ無いことを告げる。

「他になんか落としてないか?」

肩ごとはずれた腕を持って見回す。

《指が岩陰に・・・あとは潰れた》

ペインブロックの機能に感謝しながら拾う。

「総士、お前は大丈夫か?」

拾った弾みに砂が舞った。

《問題ない。島も少し揺れた程度だ》

(どうだか・・・・・・・)

誰にも聞かれない、頭の中同士の会話。

何か不満だ・・・程度にしか、総士には伝わらないのだけれど。

記録には残らないから、誰にも聞かれない。

「帰るのか?総士」

急に姿が薄くなった総士に声をかける。

なんだ、ブルグまで一緒かと思った。

《・・・・・・そこは寒い。お前もはやく、帰って来い》

なんだ、寒いからか。ならしょうがないや。

海底にいることをすっかり忘れていた。

戦いの直後で、寒さなど感じない。

打った場所と無くなった肩の付け根が軽く痺れるかな・・・ぐらいで。

むしろ、それ以上感覚が戻られると困るのだ。

でも総士にとっては物凄く寒い場所なんだろう。

うっかりしていた。

頭を掻こうにも手一杯でそれどころじゃなかった。

 暗い海底から一気に海面へと飛び出す。

別に急いでいるわけでもなかったけれど、嬉しくて。

総士が早く帰れと言ってくれた。

それだけで嬉しくてたまらなかった。

はやく、だ。

ゆっくりではないのだ。

ゆっくりではなく、はやく。一刻もはやく、一騎を無事で安全な島に連れ戻したい。そういうことだ。

「総士、着いたぞ」

ブルグに入りながら伝えた。

ブルグに入って、ザインではなく真壁一騎に。

一騎として、ブルグの通信機から総士に話した。

「ただいま」

まだジークフリードシステムのままの総士。

別の機体回収に手間取っているのか、一瞬一騎の方を見ただけだった。

忙しさを察して、一騎のほうから通信を切る。

(お疲れ様・・・・・・)

後で部屋に何かまた持って行ってやろうと思った。
















それが出来る幸せ。

END