煌めきそのもの


 だと誰かが言った。

あの二人は煌めきそのもので。だから周囲に皆を集められ、皆を圧倒し、常に勝利の中に居続け、いつまでも先を

見据えて立ち続けることができるのだと。

「『羨ましい』って言われたことになるのかな」

「・・・・・・さあ」

 後輩から言われた言葉をまとめて総士に教える。

その後で自分の見解をそっと添えると、とくに興味が無いとでも言うようにあしらわれた。

けれどそれは口先だけのことで、口に出すときにうっかり総士が言い間違えた・・・・・・・その程度のことだった。

隠れているわけではない。けれど、総士の部屋にいた。

総士がリラックスできる場所はここしかない。

だから仕方なかった。

 ソファーに腰かけながら、同じくソファーの一騎の隣に腰かけている総士をうかがうと、総士はベッドの足元辺りの床を

ぼぅっと見ていた。

多分一騎が来なければ、総士は一人で同じことをしている。

容易く想像できてしまって、出来ればそんな風なことをさせたくないと思ってしまったり。

でも数十分こうしていたところで一騎が帰ってしまった次の一分からは総士は一人であることも十分理解していたりして。

複雑な思いのまま、総士とは逆に天井を見上げた。

「・・・・・・嬉しかったんだ。総士か俺の片方がっていうんじゃなくて、二人がって言われたのが」

 天井を見ていると、総士のことを伺えない。

それに気付いて、慌てて下を向いた。

足と足の間の床を見たのは一瞬で、すぐに髪の間から総士の表情をうかがう。

少しだけ、声が震えた。

確かめなければならなかった。

「総士、お前は・・・・・・嬉しく無いか?」

待った。

総士の返事、掠れ声すら聞き漏らしたくなくて息を止めた。

全くの無駄で言葉は無かった。

息をついたとき、総士が顔を上げた。

「・・・・・・うれしい?羨ましがられるのが?」

そう言って、きょとんとした顔つきで一騎の方を向いてくる。

「それも・・・・・・あるけど」

 顔を見合って止まる。

「けど・・・なんだ?」

唾を飲み込んでから言った。

「『二人』っていうのが嬉しくて・・・・・・お前は?」

 優しく笑う。

言葉、わかっていますか?

優しい笑みが返される。

「良かったな」

「疲れてるのか?」

ズレていくことに納得できる理由をつけたかった。

抱きしめたくなるくらい優しい顔で、総士が笑った。

「そうかもしれない」

一気に嬉しくなってしまって抱きしめる。

たとえ自分達が煌めきだとしても、島を代表する煌きは、こうして地下深くの一画に閉じこもっていますよ。

洞窟の中の一つの室にいるようなものですよ。

片割れは滅多に外に出ないせいなのか疲れたせいなのか、ちょっと頭がおかしくなりはじめていますよ。

それでもそんな相手のことが大好きなのです。

 抱きしめていた腕を緩めた。

待ち構えていたかのように総士が一騎から離れ、立ち上がり、ベッドに座り直す。

・・・・・・暑かったのかもしれない。

「明日の散歩、どこ歩く?」

引きこもりがちの総士を誘い出すためのいつもの台詞。

一緒に行こうと言わなければ総士は出てこなかった。

だからいつも、一緒に行った。

その姿を沢山の人に見られていた。

「海・・・・・・かな。浜を歩きたい」

「わかった」

 空の下を歩くのは総士も好きみたいで、この問いかけをした時が一番ちゃんとした返事が貰える。

それが欲しくて聞くのかもしれなかった。

『二人』が煌めきなのが嬉しかった。

まともな自分だけではなく、総士も。

皆の中で昔の総士が自分と居ることになっている。















幸せだった。











END