夢のような時間のあとは、まどろんで・・・・今が一番しあわせだと思う。
赤ちゃんのくちびる
本当はじっと見つめあっていたいのに、体力の限界がそれを赦してくれなくて。
顔をあげることもできないぐらいに疲れているから、せめて、同じベッドに横たわる。
自分は、体中が。
総士は特に、頭と目が。
苦しいわけではないのだけれど、とにかく体が動かない。
自分が先に約束していたベッドに倒れて、総士は先に何度も何度も目を洗って
それからベッドに倒れこんでくる。
頭が痛いとたまに呟かれても何もしてやることができないから、聞こえないふりをした。
総士は目を開けない。
だから、こちらが見ていることに気づかない。
気付いているかもしれない。
でも、反応しない。
だから思う存分眺める。
疲れたけれど、これは楽しいことだから
多少体に無理をしてでも目を開ける。
真上の明かりのみ消したぐらいで総士は消えない。
少し襟元を広げてみたり
ぐしゃぐしゃに散った髪を手櫛で整えたり
その髪に口付けたり。
胸に顔を埋めてみたり。
心臓がちゃんと動いているか確かめたり。
ある晩ふと真夜中に
なんだか変な感じがして目が覚めた。
一気に目をあけることが出来なくて
開くか開かないかの薄目で様子をうかがう。
白い手が、お腹の辺りをさすっていた。
「何?」
擦れ声で訊ねると
相手から小さな笑い声が漏れた。
見つかったと、小さな声で笑っていた。
目を開けるのが辛いので
手探りで形を追って遊んでいるのだという。
一騎が起きないように、起きないように
そう言う時も、目を閉じていた。
夜中に勝手に目が覚めたとき、たまにしているのだと笑って言った。
起きないように、起こさないように
これだけを絶対の約束にして、毎晩どちらかがどちらかで戯れる。
気づかれたら負け。
気づかれたらお終い。
とても難しい遊び。
ほんの少し指先が震えれば、相手が起きて全てお終い。
相手が起きてしまったら、さっさと眠ってしまわなければ
昼間より、相手の姿がよく見えた。
傷が眉毛を切り裂いていたり。
肌が少し、引きつっていたり。
指で追うと、ザラッっとしたり。
肌が冷たかったり。
綺麗だったり。
綺麗だったり。
寄り添って寝ると手が届かなくて
腹から下に手が届かなかったり。
だから何度も撫でられる
そんなにお腹が好きかと聞いたら
あったかいと言われた。